独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「何も心配しないで、麻莉は俺の隣にいればいい」
喜多さんのこと。これからの自分のこと。心の中に気がかりは残っているというのに、彼の言葉で簡単に肩の力が抜けていく。
遼が隣にいるだけで、心強い。こんなにも安心してしまう。
見つめ合い、照れながらも、彼に笑いかけた時、再び車が動き出した。
「わかった……この先、左折ね……えーっと、この先、だから」
ナビの音声に花澄さんが返事をし、続けて悩ましげな声を発する。
遼は身を乗り出しながら、ナビ上に表示されている地図と前方に視線を行き来させる。
「……おい、花澄」
「なに?」
「通りすぎてる」
「えっ!? さっきの所を左折だったの!?」
納得いかない様子だったが、ナビ上の現在地を示すカーソルが左折予定の場所を通りすぎてしまっていることに気が付いたのだろう。
花澄さんは「あー」と唸り声をあげた。
「ホントだ。どうしよう、通りすぎちゃってる……えっと、じゃあ……とりあえずここ曲がっとこうかな」
ビルとビルの間にある小道へと入るべく、花澄さんが左へと車を寄せていく。
ウィンカーを出した瞬間、遼が再び「おい!」と声を上げた。