独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「あーあ。久しぶりにお兄ちゃんに怒られちゃった」
滑らかに車を発進させつつ、遼が運転席から言葉を返す。
「俺だからこれくらいで済んだんだ。佳一郎(けいいちろう)だったら、心が折れるまで小言言われるぞ」
「……うん。お兄ちゃんで良かった……麻莉さんも知ってる人ですよ。お兄ちゃんの秘書が中條(なかじょう)佳一郎さん。さっき会ったでしょ? 怖くなかったですか?」
聞き覚えのない名前に、自然と首を傾げてしまっていたらしい。
花澄さんがそんな私に気付いて、そう教えてくれた。
あの人かと、遼の秘書の男性の顔を思い浮かべていると、遼が反論に出た。
「佳一郎は怖くない。お前の鈍くささが、全て悪い」
「怖いって! あの人、いつ見ても怒ってるし!」
遼には悪いが、花澄さんに激しく同意してしまう。
私もずっと、遼の秘書はいつ見ても不機嫌そうだなと思っていた。
今日のあのやり取りを見て、敵に回したくない部類の人間というイメージも追加された。
遼は物凄い強者を引きつれて歩いていたんだなと、妙に感心してしまう。
「それにしても……お兄ちゃんがあんなに焦ってるとこ始めて見た。本気で麻莉さんのこと好きなんだね。うんうん。分かるなぁ。麻莉さん、素敵だもんね」