独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
嬉しそうに話しかけてくる花澄さんに、私は曖昧な笑みしか返すことができなかった。
「これから長い付き合いになりそうだね。よろしくね、麻莉さん!」
私は遼の事を特別に思っているけれど、遼が私のことを女としてどう思っているかは……わからない。
親に反発するための有効手段として、彼が恋人役を買って出てくれた。
今まで私がドキドキしてしまったものは全部、親を信じ込ませるための彼の演技で、役目を終えた今、友人として私の傍にいてくれているだけ。
私たちは本物の恋人同士ではないのだから……期待しちゃだめだ。
こんなにも傍にいるというのに、運転席に座る彼の背中が遠くに感じた。
+ + +
約三十分後。私は都心一等地に建つビルの地下一階にある高級寿司店のカウンターで、倉渕兄妹の間に挟まれお寿司をご馳走になっていた。
「食べ終わってからの、お兄ちゃんたちの予定は? デート?」
「そうだな……」
花澄さんの問いかけを受け、遼が私をちらりと見た。
私はそれに答えることが出来ず、ただお寿司を口に運ぶ。
「花澄と別行動ってことだけははっきり決まってる」
「お兄ちゃんひどい。そんなはっきり言わなくても……まぁでもそうだろうなとは思ってたけどさ、なんか傷つく……いいもん。今日で無事知り合いになれたから、麻莉さんとはこれからたくさん遊んで、お兄ちゃんより仲良くなってやる」
「やれるもんならやってみろ」