独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます

目の前を飛び交う言い争いに身を小さくさせていると、カウンター内にいる大将の顔に笑みが浮かんだ。

気難しい職人気質の人かと思っていたけれど、どうやらそうではないらしい。

表情から、倉渕姉妹のやり取りを微笑ましく感じているようだった。

私は食事の手を止め、店内にある時計へとぼんやり顔を向ける。

時刻はもうすぐ午後二時になろうとしているところだ。

遼があの場から連れ出してくれたから、私は今こうしてのんびりと食事を楽しむことができている。

けれど、喜多さんや秘書の中條さんは今どうしているのだろうと考えてしまえば、自分だけこんな風にのんびり食事をしていることが心苦しくなってしまう。

時計から自分の手元へと視線を落とすと、そっと温かなものが頬に触れた。

驚き見れば、遼の指先が私の頬に触れていた。

彼の優しい眼差しに、一気に頬が熱くなっていく。


「とりあえず、俺たちはここでしばらく待機。まずは佳一郎と合流しなきゃな」


くれた言葉にどきりと鼓動が跳ねた。

自信たっぷりな笑みを見せられ、涙がじわりと浮かび上がってくる。

私の不安を和らげてくれるかのような言葉は偶然発せられたものではない。遼は私の気持ちを見抜いている。

微笑み返すと、遼が少しだけ肩の力を抜いた。


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