独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「花澄さん、うるさいですよ。もういい大人なのですから、周囲に迷惑をかけぬよう行動を」
「げっ! 中條さん! しかも何で私だけ怒られるの!?」
大きく後ろを振り返り、花澄さんが怒りの表情を浮かべる。
反抗的な彼女を呆れ顔で見てから、中條さんは遼へと体を向け頭を下げた。
「すみません。遅くなりました」
「いや。そっちは大丈夫か?」
「えぇもちろんです」
淡々とした会話が続く中、心待ちにしていた彼の登場に我慢できなくなり、私は席から立ちあがった。
「あの……」
もちろん聞きたいことは、一つだけ。
「喜多さんは……あのあと……」
思いばかりが溢れ出し上手く言葉を紡げずにいると、中條さんの細い体の後ろから、ひょこりと女性が顔を出した。
「私をお呼びですか、お嬢様?」
「喜多さん!」
叫ぶと同時に、足は自然と彼女の元へと進んでいく。
「私……いろいろ……ごめんなさい」
「お嬢様が気に病む必要はありませんよ。すべて私が決めたこと」
柔らかく笑ったあと、喜多さんが私にバッグを差し出してきた。
「お嬢様のバッグはこちらでしたね」
言う通り、それは昨日斉木さんに預けたあと返してもらえなかった私のバッグである。