独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「あの後、私は旦那様にお暇をいただきたいと申し出ました。そのまま、中條さんに西沖家まで送っていただき、自分の荷物をまとめるついでにお嬢様のお荷物も」
「……そうですか」
本人はどことなく晴れ晴れとした顔をしているように見えるけれど、私にとっては喜多さんが辞めてしまったという事実は、とても切ないものだった。
幼いころから誰よりも傍にいてくれたのが彼女だった。新しい母よりも、私は彼女を母親のように慕っていたのだ。
自分が引き金となっていることへの負い目や、もう会えなくなってしまうことへの寂しさで、胸が苦しくなっていく。
「バッグをありがとうございます。助かりました……あの、私……本当に……」
震える手でバッグを受け取り言葉を詰まらせていると、喜多さんが私の手を覆うように、柔らかな手を重ねてきた。
「お嬢様がいつかまた、あの家に戻るときがくるかもしれない。その時は私が、八重(やえ)奥様の代わりにお嬢様を支えられればと、そう考えておりました。けれど今日おふたりを見て、私の役目は終わったと強く感じました」