Butterfly

「奈々美は、何も悪くないよ。直して欲しいところなんて何もない。仕事とか人間関係とかなんかもう全部に疲れちゃったんだ。だから今は、一人になりたい。」

これがもし本当の理由だとしたら、なんて自分勝手な男なんだろうか。


「そんなの全然意味わかんない。理由になってないよ。じゃあ、この二年半は、何だったの？今は、一人になりたいだけなら別れる必要ってあるのかな？」


「もう何も考えたくないんだよ。」

「奈々美が原因じゃないなら奈々美と別れる必要がどこにあるの？別に何も考えなくたっていいじゃん。奈々美と付き合ってる事によって何か考えなきゃならい事なんてある？」


「あるよ。付き合ってて何も考えないなんて無理だろ。」


ごもっとも過ぎて返す言葉が見つからなかった。付き合っていれば何も考えない事なんてはっきり言って無理がある。頭では、分かっていた。だけど今の私には、目の前の彼を止める事に必死だった。
なんてみっともないんだろう。



「それに最近どこにも連れて行ってやれてない。それも可哀想だなと思うし。奈々美はさ、もっと色んな所に連れって行ってくれて、奈々美の事幸せにしてくれるようなやつと付き合いなよ。」


理不尽極まりない。
でももう二年半も一緒にいればこうなったら何を言っても、もう聞かない事くらいわかる。
出会ってから約3年間は、ずっと仲のいい友達だったから、それも含めたら計5年半の付き合いになる。だから彼の性格は、よく理解している。
付き合ってたこの2年半で一度も別れてないわけではなかった。
何度も別れて、戻ってを繰り返してたからどうせこうなってもまた戻る。


さっきまで泣いてアホみたいに縋り付いていた私が嘘みたいに
あっさり涙を拭いて車のドアを開けた。


「もう分かったよ。2年半ありがとう。裕也と付き合えて、凄く楽しかったし幸せだった。バイバイ。」

そう言って私は、車を降りた。