檸檬の約束
家に帰ると月弥の姿はなかった。

代わりに私の荷物がまとめてあった。

「出てけってことか。」

でもこんなことをされたのは初めてだった。

「私だけが悪いわけじゃなかったのに」

繊細でナイーブな月弥とは意見が合わずに度々喧嘩をしたけれど私たちはお互いが大好きだった。

結婚だって考えていたのに。

しばらく離れて冷却期間を置いた方がいいかもしれない。

本人がいない以上話し合うこともできない。

私は必要最低限の荷物を持って家を出た。

「とりあえず、友達のとこ泊まらせてもらおう」

私は友人に片っ端から電話をした。

だが友人のほとんどが結婚もしくは同棲、実家暮らしで芳しい返事は貰えなかった。

(どうしよう、残るは実家しかないけど・・・嫌だ。)

ぽん、とおじさんの顔が浮かんだ。

(実家に帰るくらいなら)

私はうろ覚えの道を辿りながらおじさんの家に向かった。

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