【短編】甘酸っぱいコイゴト
だけど、俺は…
「……さぁ」
“好き”なんて…言わない。
そんな台詞を素で言えるほど
俺は人間ができていないんだ
ガキみたいに
照れとか恥ずかしさが勝(マサ)ってしまう
俺がもっと人間ができてたら。
マンガの王子のように、乃嘉に言えるのかもしれない。
でもそんな俺は、まだいないんだ。
いつかは言えるだろう……なんて、軽く考えていた。
だから……
「…優弥、
…………別れよ。」
乃嘉からそうなことを言われるなんて
思ってもみなかったんだ……。
「いままでありがとう…」
「えっ………」
なに言ってんだよ……っ!
「……バイバイ。」
乃嘉…!!
乃嘉は反対方向へと走りだし姿がどんどん見えなくなっていった。
なんでだよ……ッ!
なんで別れるなんて……
俺はその場から動けなくなった。
追わなければいけないのに
乃嘉に話しを…
理由が聞きたいのに
足はまるで何かを乗せたかのようにズッシリと重くなり、進ませようとはしてくれなかった……