Maybe LOVE【完】
急上昇するココロ

「カナ、起きろ」
「………やだ」
「やだじゃないだろ。起きなかったら襲うぞ」

襲われるのは嫌だ。
そう思って重い頭と体を起こす。

「お前、人の家に来て酔いつぶれるのやめろ」

頭上から溜息が落ちてきて耳が痛い。
あ、間違えた…重い頭に響く。

別に二日酔いとかじゃない。
お酒が抜けきってないだけで…って、それを二日酔いっていうのか。

どうやらあたしはお酒が残っていても随分お喋りらしい。
のっそりと体を上げてお風呂場に向かう。

「起こした俺に礼もなしか」
「………」
「返事もなしか。別に期待してないけどな……おい!ぶつかるだろ」

脱衣所のドアを開けようとしたのになぜかドアを支えられる。
なに?と足元を見てた頭を上げるとあたしの顔面ギリギリにドアがあって、カオルがそれを支えてくれてた。

「お前、自分で開けたドアに当たりにいってどうする」

呆れた言葉が落ちてきて“やってしまった”と思う。

これも最近ずっと繰り返してる。
その度に怒られて酔いが冷める。
ありえない、と思いながらも仕方なく説教を聞く。

今日もきっと説教されるんだ、と思って覚悟をして俯く。
だけど、今日は何も言われない。
何があったんだ?と上を向くと真剣に呆れた表情があった。

「…どしたの」
「どしたの、じゃねぇよ。お前、わかってんのか?」

盛大な溜息と共に「わかってんのか?」って言われても、あたしはお酒に飲まれてて、そう聞かれて考える力がないことくらい気付いてほしい。

…いや、そういう事を言ってるんじゃないのはわかってる。
でも、それがわからない。
あたしが首を傾げると「だよな…」と項垂れた。

あたしがカオルの家に泊まるようになって2ヶ月が経つ。
といっても毎日じゃないし、2週間に1回くらいだから4回…くらいだと思う。

あの日以来、あたし達の仲は友達だけど恋人ではない微妙な関係になった。
カオルはあたしを家に呼んで一緒にお酒を楽しむ。
元々それほど強いわけではなかったけど、カオルと一緒にお酒を飲むようになって強くなってきた。
それだからか調子に乗って飲みすぎる。
その結果がコレ。

友達に言わせれば、“彼氏でもない男の家に行って飲み潰れるって理解不能”らしいけど、あたし達はそれで成り立ってると思ってるから何も思わない。

あの日、カオルはあたしのことが“気になる”と言ったけど、ついでにキスもしやがったけど“好き”とは言われてない。
2ヶ月もの間、あたしは酔いつぶれてカオルの家に泊まってるけど、ちなみに寝るときはカオルの腕枕だったりするけど、それ以上はしていないし、する理由もない。

カオルは二日酔いのあたしの介抱をこうして文句を言いながらもしてくれるし、胃に優しいお味噌汁を作ってくれてたりもする。
次の日は必ず休みだから家まで送ってくれることだってある。




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