Maybe LOVE【完】


朝のニュース番組を黙って見てるカオル。
あたしならニュース番組じゃなくて情報バラエティを見てる。
こういうところに少し歳の差を感じたりする。
あたしは子供でカオルは大人、そう言われてるみたいで必ず溜息も出る。

「なんだ?」

あたしの溜息に気付いたカオルが顔を覗きこんできたけど、顔を逸らした。
逸らしたところでカオルが何も言わないのはわかりきってること。
そのまま部屋に戻って帰り支度をしようと立ち上がったら腕を引かれて中途半端に立った体勢から一気にソファーに倒れた。

「ちょっと!びっくり、……すんじゃん」

倒れこんだ体勢でカオルに文句を言おうと顔を上げるとなんとも言いがたい無表情であたしを見ていた。

硬いソファーが好きなカオルだから勢いよく背もたれに頭打ったし跳ねないから衝撃も受けた。
だから文句を言ってやろうと思ったのに、無表情で見てるから言えなくなった。

「なんで顔逸らした?」
「…なんでだろうね」

珍しく真剣な声色と自分の行動の気まずさに目を合わせることが出来なくて、また逸らしながら答えた。

あたしがもう動かないとわかったのか、腕から手を離すと、今度は数秒間何も言わなかったカオルが動く。
顔を逸らしてるから何をし始めるんだと思うと体ごとあたしに向けてじっと見つめてる。
何をって、あたしを見てる。

「……やめてよ」
「なにが」
「見つめるの」
「誰を」
「……あたしを」
「じゃあ、なんで顔逸らしたか言え。あと溜息もな」

全部じゃん!と思ったけど、自分がカオルの立場でも気になる。
無意識だったけど明らかにしくじってしまった。

視線を逸らして逃げ道を考える。
あの日以来、こういうシチュエーションが無かった。
一緒に寝ていることはあっても、それは泥酔しているから知らないし、故意的にこういう空気にしなかったのもあると思う。

カオルがあたしを家に呼んでも、あたしがこういう空気を避けてたから今までなかったけど、今回はまた違う。
今まではあたしが避けてたけど、今日は避けられない。
だけど、あたしに原因がある。

カオルに対して“安心する”とか“弱みを見せる”とか“ありのままの自分でいられる”とか、そういう気持ちがなければ、こんなに緊張することはなかったんだと思う。

たった二ヶ月、されど二ヶ月。
ココロというものはこうも変わるのか、と自分でも驚く。

「黙るのか?」
「そうだって言ったら?」
「許すと思うか?」
「どうだろ」
「お前な…」

自分でもイラついてる。
もちろん自分の言葉に対して。

これでカオルが怒らないわけがない。
カオルも舌打ちしてるからイラついてる。
だけど、それを見せないようにしてる。
…滲み出てるけど。
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