Maybe LOVE【完】
なに言ってんだコイツ、そう思った。
俺から動かないってここまで近付いといてそれはないでしょう、というのが正直な気持ちだけど、それ以前にもっと大事なことを言い忘れてる。
「カオルって、あたしの事、好きなの?」
超至近距離でもわかるくらいカオルの目が見開いた。
そして、返事もせず、いや、自分は動かないって言っておきながら荒々しく口付けた。
「……自分からは動かないって言ったのに」
「お前と話してるとイライラする!!もうお前の気持ちなんか知るか。意地でも俺のもんにしてやる、バカ!」
30も過ぎた男が10歳も年下の女に向かって“バカ”ってどんだけ子供なのよ、と呆れたけど、荒々しく気遣いの欠片もないキスが嫌じゃなかったあたしのココロは決まってるらしい。
「不本意だけどね」
「あ?」
「あと一ヶ月我慢できたらね」
「はぁ?!」
結局、カオルに涙を見せてしまった日からガードが緩んで、ありのままの自分でいたんだと思う。
そしてカオルの傍でいるときの居心地の良さと温もりに安心しきっていたんだと思う。
好きとか嫌いとか、愛とか恋とか、ちゃんとした恋愛をしてこなかったあたしには未知の世界の話だけど、でもカオルなら素直な自分をさらけ出せると思う。
きっと、この居心地の良さも愛情へ変化していくんだと思う。
カオルがいなければあたしじゃなくなるくらい深くハマっていくんだと思う。
だけど、今はまだ正直になりたくないし、もう少しこの関係を続けていきたい。
一ヶ月の条件はちょっとした意地悪心だけど、カオルならバカ正直に守ってくれるに違いない。
今までもそうだった。
だからカオルだけは信用したいし、カオルにとってもあたしの存在が居心地の良い場所になればいいと思う。
「本気で言ってんのか」
「冗談言ってるように見える?」
「キスは?」
「考えとく」
「その返事で一ヶ月待つ意味がわかんねぇよ」
End.