Maybe LOVE【完】
幼なじみ二人で近状報告をしあい、シゲルさんの奥さんが第二子ご懐妊の話題になって、お祝いであたしにもう一杯カクテルを入れてくれた。
お祝いっていうより飲み終えるタイミングでシゲルさんが出してくれただけだけど。
「あんま飲ますな。潰れたら困る」
「2杯じゃ酔わないよ」
「クリスマスだもんねぇ」
噛み合わない会話にニコニコしながら「この後はどうするの?」とあたし達の顔を交互に見ながら聞く。
あたしはカオルを見て目が合わないからシゲルさんに首を傾げた。
今日の予定は聞いてない。
仕事だって聞いてたからどこかに行く予定もなかったし、ご飯を一緒に食べれたらいいかな?くらいにしか思ってなかった。
この後のことはカオルに任せるつもりでいたし、明日は仕事だから家に帰ることになるんだろう。
「クリスマスプレゼントは何にしたの?」
普通は“クリスマスプレゼント買ったの?”とか“クリスマスプレゼントは交換したの?”とかそういう問い方をするはずなのに、おっとりしてるだけじゃなくて、ちょっと抜けてる部分もあるのかもしれないシゲルさん。
出てきたパスタをくるくるとフォークに巻き付けながらカオルがどう答えるのか見てた。
海鮮クリームパスタは口に残らない濃厚さ。
どうやったらこんなにあっさり作れるんだろう...と一人感激してた。
二人の存在を忘れて食べ進めてると水を出してくれたシゲルさんが「いいね~、食べっぷりがいい女の子大好き」と言ってあたしに向かって伸ばした手をカオルに叩かれていた。
それも気にしないあたしは「少しは警戒しろよ」というカオルの言葉を無視してパスタを食べ続けた。
「うん、カオルが好きになった理由がわかったよ」
ニコニコしながらシゲルさんは言う。
カオルは黙ってお水を飲んだ。
あたしを横目で見て一度視線を戻してから頭をぽんぽんと叩いた。
なんなんだろう。
カオルはそんなあたしに優しく笑うだけ。
向かいからシゲルさんが「ラブラブだねぇ」と冷やかすから黙って出されたデザートのアイスをつついた。
今更だけど、シゲルさんがいることでなんだかあたしの調子が狂う。
普段カオルと二人だと互いに気を遣わず自由にしてるけどシゲルさんはそれにいちいち突っ込んでくる。
もちろん原因は何も話さずただひたすら食べ続けるあたしと、そんなあたしを放ってシゲルさんと会話してるカオルにあるんだけど。
ラブラブだと言われても何をどう見てそう思ったのかわからないあたしと溜息吐いたカオルとニコニコするシゲルさん。
全く噛み合わないのに成り立つ今が不思議。
「カオルってば愛情表現薄いでしょ?不安にならない?」
心配そうに聞いてくれるシゲルさんに“それはあたしの方かも…”と言うことは出来ず「不安はないです」と答えた。
隣からの視線が痛かったけど無視した。
どうせカオルはあたしからの愛情が足りないって思ってるに違いない。
「ほんとに合うんだねぇ。これはカオルが離さないわけだよね」
うんうんと頷くシゲルさんに居心地悪そうなカオル。
どういうことですか?と聞いたら笑顔で答えてくれた。
「カオルって愛情表現薄いから女の子がみーんな不安になって泣いちゃうんだけど、カナちゃんは今までの女の子と違ってそれを理解してるんだなってこと。それかカオルがベタボレなのかどっちかだね」
俺的には後者の方が面白いんだけど、と笑いながら言う。
後者ですよ、と教えてあげたかったけど突っ込まれると面倒くさそうだからやめた。