Maybe LOVE【完】



「10歳も年下で料理も家事も出来ない女と結婚する勇気があるならね」
「勇気とか必要ねぇよ。てか、そこは頑張って努力しろよ」
「この指輪がエンゲージに変わるなら考えてあげてもいいよ」
「新しいのが欲しいってか」
「あたしに一生縛られたいなら結婚してあげてもいいよ」
「言い方が怖いな」
「カオルが一生あたしを好きでいてくれるなら結婚してあげてもいいよ、今すぐにでも」
「なんで上から目線なんだよ」

ここまで言ってあたしはカオルを見つめた。
左手を顔の横に出して指輪を見せる。
どうする?って顔してやる。
カオルは眉間に皺を寄せる。

笑って返事を待ってると急にソファから立ち上がって寝室へ消えた。
なんなの?と思って待ってると小さな箱を持ってきた。

何の変哲も無い小さな箱。
同じ位置に座り直してその箱を自分で開け始める。
何が出てくるのか興味津々なあたしはそれを覗き込むように見てた。

邪魔とも言わないまま箱は開かれ、出てきたのは赤のケースに入った指輪。
石の付いた本物の指輪。

「本気で考えろよ」

そう言ってあたしの左手を取って、それを薬指に嵌めた。

二重に重なった指輪。
一つは恋人の証と新しく付けられたモノ。

「これ、って…」
「俺は俺なりにちゃんと考えてるんだよ。だけど歳が離れてるとタイミングがわからん。でも“エンゲージに変われば考える”んだろ?」

やってやった感丸出しのカオルに唖然とするしかない。
本当に出てくるとは思わなかった。

本当に嵌められたエンゲージリング。
まだ約束の段階だけど、シチュエーション云々無しにしても想像以上に嬉しくて感動してしまった。

無意識に出た涙をカオルが笑いながら拭ってくれる。
戸惑いや迷いなんて一切ない。
あたしにはカオルしかいないと思ってたからカオルが同じように思っていてくれたことが嬉しい。
冗談で言ったことなのにこんな風に返してもらえるなんて思ってもなかった。

「俺と結婚しろ、カナ」
「命令じゃん、それ」
「泣くほど嬉しいか。そうか、そうか」

最初から考えてくれていたらしいカオル。
そして、あたしはどこまでも子供だ。

一緒に生きていくことがどんなに大変なのかわからないのに、約束を貰っただけで感動出来てしまう。
ただの指輪でさえも輝いて見えて、幸せが溢れ出す。

「ていうか、最初から俺にはお前しかいないんだよ、バカ」
「バカって言うな」
「俺がお前を手放すわけないだろうが」
「そんなのわかんないじゃん」
「結婚すんのか、しないのか?」
「カオルがあたしを手放してくれないから、してあげるよ」

頬に流れる涙を拭いて意地悪く笑ってみせると「可愛くねぇ」と笑いながらもキスをくれた。







「クリスマスにプロポーズって予想外?」
「この流れ自体が予想外だよ」
「あたしがOKするのも予想外?」
「いや、全然」
「・・・なんでよ」
「お前には俺しかいないからな」
「・・・」
「返事はいらん。ちゃんと愛してやるから」






END.
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