Maybe LOVE【完】
「ほら、水」
頭が痛くて記憶がプツリプツリと途切れる中で、ソファに座らされ、手にコップを握らされる。どうやら水らしい。
そういう気遣いは出来るんだ、とありがたく頂いた。
冷たくて美味しい。気休めだけど、少し体の熱も引いた感じがする。
「あれだけ飲んで、あの場でこうならなかったのが奇跡だな」
男は私の隣に座って笑う。
タバコの匂いがする。肩が触れるくらい近くに座ってる。
それくらいは理解できた。
これからどうなるんだろう?そんな疑問も頭の隅っこで浮かんだ。
「明日って何曜日だっけ?」
男が尋ねる。
「多分、・・・日曜日」
じゃあ大丈夫だな、と何に納得したのかわからないけど、大きな溜息を吐いた。
「明日、仕事休みだろ?」
「うん」
「じゃあ、泊まっていけ」
「は?!」
“泊まっていけ”の言葉に体を起こして思いっきり反応した私は自分の声と急に動いたことで頭に響いて、頭の痛さに蹲ると「じっとしてろ」と肩を抱かれるようにして、ソファもたれさせられた。
男の腕は私の肩にまわったまま。
座ったまま腕枕された形で密着してる私たち。
なんなんだろう、これは。
「そんな状態で運転して帰れないだろうが。明日帰れ」
「少し落ち着いたら帰る」
「無理だ」
「二時間も寝れば大丈夫」
「起きれんのかよ」
「大丈夫」
「いいから、とりあえず寝ろ」
男の肩に頭を置いたままなのは頭痛がひどくて少しでも上げる力が残ってないからだ。
この男の言われるがままになってるのは、いつも以上に入ってるお酒のせいで思考が鈍っているからだ。
本当に目を閉じようとしちゃってんのは睡魔に勝てないからだ。
眠りに落ちる途中、男が私の髪に触れていることもわかってた。
頬を撫でてることもわかってた。
でも、抵抗しなかったのは安心したからじゃない。
決してそうじゃなくて、眠りに落ちていく自分を止められなかったからだ。
そう何度も言い聞かせながら、意識を手放した。