許婚のいいなり
せんりに毛布をかけて静かに自分の部屋に戻った。

もうすぐで一章が終わる。
何度も読み返して、書き直して、また読み返す。同じ作業の繰り返しですぐ飽きるかと思ったけど、案外楽しい。
これは小説が好きだからなのか、また違う理由なのか。考えなくても分かる。

「こうき」
「…ん?」
「毛布ありがとう。あとこれ」

そう言って差し出したのは小さくカットされたりんごだった。

「…りんご?」
「うん!頭使うには糖分が必要でしょ!」
「それでりんご…?」
「だ、ダメかな?」
「ううん。りんご好きだから大丈夫。ありがと」
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