許婚のいいなり
せんりは1度ニッコリと笑って部屋から出た。
同居が始まってから、せんりには世話になる。

「今日長い夜になりそうだ」

誰にもとどかない独り言を漏らし、また机に向き合った。

「頭のなかで広がる世界を、文字で伝えるって案外難しいものなんだよね」
「そうだね。でも、だからこそ、完成した時の達成感は何にも例えられないよ」

誰か、喋っている?
時計を見るともう3時を過ぎていた。
無心で書いていたせいで気づかなかった。もうこんなに時間が過ぎていたなんて。
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