君は生徒、愛してはいけない
クリスマスイブは夕方まで学校に行った。
「中村くん、なんか今日ご機嫌ね」
給湯室で松本先生に指摘される。
「、、そうですか?」
「さてはクリスマスだからって浮かれてんのね〜。
彼女でも出来たの?」
松本先生が発した彼女、と言う言葉が俺には妙に新鮮だった。
彼女、、ではない。
俺は華に好きと言っていない。
「いえ」
松本先生はなーんだ、とコーヒーを口に流した。
「でも今日、好きな子とご飯食べるんです」
松本先生は今まで見たこともないほどニヤニヤした顔をした。
「なんだー、そんな子いたのね!早く言ってよもう!」
「それで?プレゼントとか買ったの?」
ワクワクしながら早く早く、と言わんばかりに身を乗り出して聞いてくる。
「、、買いましたよ。ネックレス」
「やだー!素敵!」
松本先生は他人事にもかかわらず自分のことのように口を押さえてときめいていた。
「私も恋しなきゃ!なんか勇気もらえたわ、頑張ってね中村くん」
そう言って俺の肩をぽんと叩いてデスクに戻って行った。
なぜか嬉しそうな松本先生の背中を見て、俺は思った。
華は喜んでくれるだろうか。