君は生徒、愛してはいけない
幸せな朝を過ごして、俺たちは旅館を出た。
今日は夕方まで、華と知らない街を観光しようと約束していた。
旅行鞄をコインロッカーに預けて、街を歩いた。
華は俺のコートのポケットに手を突っ込んで、あったかい、と笑った。
歩きながら他愛もない話をたくさんした。
「先生、こっちきて!」
華は子供みたいに俺の腕を引っ張って歩いて行く。
「華、ここで先生はダメ」
「、、じゃあなんて呼ぶの」
「なんでもいいけど、先生以外」
黙る華を見て、もしかして俺の名前を覚えてないのかと思った。
相当なショックを受けていると、華が赤い顔でこっちを見ずに口を開いた。
「、、、わたるくん」
覚えていてくれた。
とても嬉しかった。
「よろしい」
俺も素直ではないな、と思ったが、余裕のない姿なんて華に見せたくなかった。