君は生徒、愛してはいけない
歓迎会がお開きになり、俺は島田と電車に乗った。
島田は俺と華の最寄駅より2つ向こうの駅で降りるらしい。
「遠いとこ住んでるんだな」
「あ、実家なんです」
そっか、と相槌を打ったが、それ以上何も話したいことがなかった。
それでも俺は電車を降りるまで何か喋らなくては、と会話のネタを一生懸命探していると、島田が喋り出した。
「中村先生は、その、、、」
「なに?」
「松本先生と、、、お付き合いしてるんですか?」
「、、なんでそうなんの。仲良いけどなにもないよ」
俺の言葉を聞いて、島田はずっと止めていた息を突然吐き出すように言った。
「ああ、そうですよね!よかった、、
私中村先生と同じクラスで松本先生に嫌われるかもと思ってて、、よかったです!」
そんなこと心配してたのか、こいつ。
なんだ、と思って俺はふふっと笑ってしまった。
「松本先生はそんな人じゃないよ。のびのび仕事してくれたらいい」
「なんで笑うんですか」
「なんか新鮮で可愛くて」
そう言うと島田は顔を赤くして驚いた顔をしたので、俺はマズイと思って
「、、うっそー」と言っておいた。
「もう!変な冗談やめてくださいっ」
島田は顔を赤くしたままそっぽを向いた。
今のは少し軽はずみだった、華にみられていたらまた3ヶ月くらい口を聞いてもらえないかも知れない。
なにも考えずに喋ってしまう癖が初めて危険だと感じて、改めようと思ったところで降りる駅に着いた。
「じゃまた明日」
「はい、お疲れ様でした!明日からよろしくお願いします」
島田はまた真面目に頭を深々と下げた。