君は生徒、愛してはいけない


華は白くて細い指で本をそっと閉じて言った。


「、、やだ」

下を向いてぼそっとつぶやく華の手は、本と俺の手に触れていた。


「、、なにが?」

「梨花のお兄ちゃんにならないで」


先生はあたしのお兄ちゃんだもん、と聞こえてきた気がした。


でも

俺は華のことを生徒とも妹とも思っていない。


「、、俺は誰のお兄ちゃんでもないし、みんなのお兄ちゃんでもいい」


華は泣いていた。

華が泣くのを見るのは久しぶりだった。

いつみてもガラスみたいに綺麗な涙だ。



「大丈夫、ひとりぼっちにはしないよ」

俺は華の頭をくしゃくしゃと撫でた。



華は頭を撫でると喜ぶ。

< 53 / 215 >

この作品をシェア

pagetop