君は生徒、愛してはいけない
今日は木曜日。
土日で華と一緒に退院祝いを仕込むために、仕事は今日と明日で全部終わらそうと思っていた。
華には今日はちょっと遅くなると伝えてある。
帰ったら可愛い華が大好きなからあげを作って待っている。
俄然やる気が出た。
「中村先生」
振り返るとそこにはまた、佐藤梨花が居た。
「おう、まだ帰ってなかったのか」
「うん、部活いま終わったの。
先生、本読んでくれた?」
佐藤はなぜかいつもより声が小さかった。
「いま真ん中くらい。佐藤、今日いつもと違うな」
佐藤はギクッとして、そんなことないよと慌てて首を横に振った。
「そう?なんかあったらいつでも言えよ」
俺はなにも考えずに、いつも華にするように佐藤の頭に手を乗せた。
「あ、本おもしろいよ。ありがとな。
気をつけて帰れよー」
そう言って職員室に戻った。
いつも廊下を走って帰っていく佐藤は無言でその場に立ち尽くしたままだった。