君は生徒、愛してはいけない

「うん、ありがとな。」

佐藤はその場でしゃがみこんでしまった。


「おい、授業始まるぞ」


俺も佐藤と同じように廊下にしゃがみ込み、佐藤の顔が上がるのを待った。

「先生は優しいね」



顔を上げた佐藤は目にいっぱい涙をためていた。

「、、朝から泣くなよ」

俺はそう言いながらもう一度本を佐藤に差し出した。


本を持った俺の手は、手首ごと佐藤に掴まれて


佐藤は誰もいない廊下で俺の唇を奪って逃げていった。


一瞬の出来事だった。



気付くと俺の手の中に本はもうなかった。






< 79 / 215 >

この作品をシェア

pagetop