君は生徒、愛してはいけない

校舎を出て松本先生とふたりで校門まで歩いていると、

体育館の前に華と森が座っていた。


「あらひとみと華ちゃん、なにしてんの?」

「松本先生!梨花の部活待ってるの」

森が明るく返す隣で、華は黙ってこっちを見ていた。


俺はなんだか胸が苦しくなって、華から目を逸らした。


「先生たち一緒に帰るの?」

「先生たちは今から大人の飲み会なの。」

森のあどけない質問にアンニュイな返答をする松本先生。



俺は何故かヒヤヒヤして、早くここから立ち去りたい、と思った。


「じゃあね、気をつけて帰って」

「さよならー!」

行こう、と松本先生が歩き出したとき、森が言った。


「あ、中村先生!」


俺は華と森の方を振り返った。


「梨花が反省してたよ」


なんのことかすぐにわかった。

「おう、気をつけて帰れよ」


と言って、俺は松本先生の隣を歩いた。



こうなるとはわかっていたが、


やっぱり華にも知られているーーーーー



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