君は生徒、愛してはいけない
ある日、久しぶりにおばあさんから電話があった。
「先生、今日もお忙しいのかしら?」
「今日は夕方くらいには帰れますよ」
「じゃあうちにいらして。最近華ちゃんが元気なくて」
華に元気がないのは俺もよく知っていた。
あんなにお兄ちゃんと慕ってくれていたのに、今は話しかけても来ない。
俺はおばあさんとご飯を一緒に食べる約束をして、電話を切った。
華の家の前は毎日通るが、寄るのはすごく久しぶりだった。
おばあさんはいらっしゃい、たくさん食べてねとすごく喜んでくれた。
華は相変わらず隣で静かに食べている。
食べ終わって後片付けが終わると、おばあさんは俺に目配せして華に言った。
「あっ華ちゃん、シャンプーなかったんだわ、先生と一緒に買ってきてくれる?」
おばあさんは華の手にお金を持たせて、俺と華を家から出した。
振り返ると手を合わせて、声を出さずにお願いします、と言っていた。