じいちゃんのハンバーグカレー
昼御飯に、唐揚げののったそうめんを食べた。
細切りきゅうりと、薄焼き卵、ハムとねぎがのってる、サラダそうめんってやつだな。
「野菜食べてよ」
俺は野菜が嫌いだったから、母ちゃんに言うと、
「野菜も一口食べな」
って、必ず帰ってくる。
「俺、キュウリは食べられるようになったんだよ」
って言うと、母ちゃんは俺の頭をなでて、
「えらいじゃん。お兄さんになったね!」
っていった。
昼御飯を食べたら、一緒に食器を片付けて、少しテレビを見た後に、母ちゃんは俺を子供広場に誘った。
じいちゃんちの外谷町内にある…今は外谷緑化公園って呼ばれてるとこだ。
じいちゃんが子供の頃は、滑り台とブランコ、鉄棒やジャングルジムがあるくらいの小さな公園でな。友達とよく遊びに行ったんだ。
母ちゃんは、俺が幼稚園にも入らない小さな子供だった頃のように、しっかり手をつないで公園まで歩いた。
途中、集会所の辺りで、俺はいつも駆け出して、先に公園にいって遊び初めていたんだが、その日も俺はそうして母ちゃんの手を離し、公園まで走って行った。
俺が二回目の滑り台を滑り終えた頃、母ちゃんはやってきて、いつものようにベンチに腰かけた。
「母ちゃん、シーソーやろうよ!」
「母ちゃん、うんていしよう!俺こっちから行くから、母ちゃん向こうからね」
「母ちゃん、鬼ごっこしよう!色鬼がいいな」
誘うと、母ちゃんは笑って、俺の遊びに全部付き合ってくれた。
俺は汗だくになりながら、楽しくて楽しくて、時間も忘れて駆け回った。
相当遊んで、最後に俺は鉄棒に寄りかかった。
「疲れた?そろそろ」
母ちゃんにそう聞かれて、俺は首を横に振った。
子供の頃は、いくら遊んでも疲れを感じなかったが、その日は不思議な位元気が有り余っててな。まだまだ遊べそうだったが、そろそろ日が傾いてきて、夕方になったんだとしらせてくれた。
もう少し遊んでいたいなあと鉄棒を握ると、俺はふと思い出した。
「そういえばさあ、俺、まだ逆上がりしっかりできないんだよ」
まるでできない訳じゃないが、毎回必ずできるわけでもない。
友達が出来てきているのに、自分だけできないのがなんだか悔しくてなあ。つい母ちゃんにぼやいた。
そしたら母ちゃんはパッと鉄棒を握って、地面を蹴った。
母ちゃんの体がくるんと回って、鉄棒の上にある。
走るのも遅い、体も固い、疲れるのも早い母ちゃんが、こんなに身軽に動いたところを初めてみて、俺が目を丸くしていると、母ちゃんは鉄棒から降りて俺の肩を叩いた。
「よし!やろう、ジロ」
「何を?」
「逆上がりの練習!出来るようにしよう」
そっからは母ちゃんの猛特訓だった。
鉄棒の握りかた、地面の蹴りかた、体を持ち上げるタイミング。
何回もお手本を見せてくれて、俺も何回も挑戦し続けた。
だけど、なかなか簡単には出来るもんじゃない。
俺は、子供の頃泣き虫でな。人に笑われたり、思うように進まないとすぐ泣いた。
だからその日も、俺は弱音をはいて鉄棒から手を離した。
「もう無理だよ…明日にしようよ」
いつもなら、遅くなると夕食の支度に差し障るから、母ちゃんは「仕方ない。明日もう一回やるよ!」って言って帰るんだけど、その日は母ちゃん、首を横に振ったんだ。
「ジロ。大丈夫。出来るときもあるんだから。きっともうすぐコツがつかめる。そうしたら、何度やっても一人で出来るようになるから」
俺は早く家に帰りたかった。
帰っておやつを食べて、テレビを見て、夕食ができるのをゆっくり待っていたかった。
でも、母ちゃんがあんまり真剣な顔をするから、俺はもう一度鉄棒を握った。
何度も失敗した。そのたびに母ちゃんが、
「もう少しだよ!お尻が上がってきたから!」
って励ましてくれる。
それから何回めかの挑戦で、俺の体はびっくりするくらい簡単に鉄棒に上がった。
「あっ!できた!」
「すごいじゃん!もう一回やってみな!」
言われてやってみると、またできるんだ。
「やったやった!ジロ!出来るようになったじゃん!」
三回目も成功。
母ちゃんは、俺をぎゅうぎゅう抱き締めて、頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。
俺も嬉しくて嬉しくて、母ちゃんのほっぺたを両手でパンパン叩くように挟んで笑った。
帰り道は俺たちご機嫌で、二人で手をつないで、そう遠くない道のりを、俺の通ってた小学校の校歌を歌いながら歩いた。
すごく懐かしい気持ちになったのは、俺が幼稚園の時みたいに、どこにいくにも母ちゃんと一緒じゃなくなって、友達と遊ぶことが多くなったからなんだと、その時は思ったな。
細切りきゅうりと、薄焼き卵、ハムとねぎがのってる、サラダそうめんってやつだな。
「野菜食べてよ」
俺は野菜が嫌いだったから、母ちゃんに言うと、
「野菜も一口食べな」
って、必ず帰ってくる。
「俺、キュウリは食べられるようになったんだよ」
って言うと、母ちゃんは俺の頭をなでて、
「えらいじゃん。お兄さんになったね!」
っていった。
昼御飯を食べたら、一緒に食器を片付けて、少しテレビを見た後に、母ちゃんは俺を子供広場に誘った。
じいちゃんちの外谷町内にある…今は外谷緑化公園って呼ばれてるとこだ。
じいちゃんが子供の頃は、滑り台とブランコ、鉄棒やジャングルジムがあるくらいの小さな公園でな。友達とよく遊びに行ったんだ。
母ちゃんは、俺が幼稚園にも入らない小さな子供だった頃のように、しっかり手をつないで公園まで歩いた。
途中、集会所の辺りで、俺はいつも駆け出して、先に公園にいって遊び初めていたんだが、その日も俺はそうして母ちゃんの手を離し、公園まで走って行った。
俺が二回目の滑り台を滑り終えた頃、母ちゃんはやってきて、いつものようにベンチに腰かけた。
「母ちゃん、シーソーやろうよ!」
「母ちゃん、うんていしよう!俺こっちから行くから、母ちゃん向こうからね」
「母ちゃん、鬼ごっこしよう!色鬼がいいな」
誘うと、母ちゃんは笑って、俺の遊びに全部付き合ってくれた。
俺は汗だくになりながら、楽しくて楽しくて、時間も忘れて駆け回った。
相当遊んで、最後に俺は鉄棒に寄りかかった。
「疲れた?そろそろ」
母ちゃんにそう聞かれて、俺は首を横に振った。
子供の頃は、いくら遊んでも疲れを感じなかったが、その日は不思議な位元気が有り余っててな。まだまだ遊べそうだったが、そろそろ日が傾いてきて、夕方になったんだとしらせてくれた。
もう少し遊んでいたいなあと鉄棒を握ると、俺はふと思い出した。
「そういえばさあ、俺、まだ逆上がりしっかりできないんだよ」
まるでできない訳じゃないが、毎回必ずできるわけでもない。
友達が出来てきているのに、自分だけできないのがなんだか悔しくてなあ。つい母ちゃんにぼやいた。
そしたら母ちゃんはパッと鉄棒を握って、地面を蹴った。
母ちゃんの体がくるんと回って、鉄棒の上にある。
走るのも遅い、体も固い、疲れるのも早い母ちゃんが、こんなに身軽に動いたところを初めてみて、俺が目を丸くしていると、母ちゃんは鉄棒から降りて俺の肩を叩いた。
「よし!やろう、ジロ」
「何を?」
「逆上がりの練習!出来るようにしよう」
そっからは母ちゃんの猛特訓だった。
鉄棒の握りかた、地面の蹴りかた、体を持ち上げるタイミング。
何回もお手本を見せてくれて、俺も何回も挑戦し続けた。
だけど、なかなか簡単には出来るもんじゃない。
俺は、子供の頃泣き虫でな。人に笑われたり、思うように進まないとすぐ泣いた。
だからその日も、俺は弱音をはいて鉄棒から手を離した。
「もう無理だよ…明日にしようよ」
いつもなら、遅くなると夕食の支度に差し障るから、母ちゃんは「仕方ない。明日もう一回やるよ!」って言って帰るんだけど、その日は母ちゃん、首を横に振ったんだ。
「ジロ。大丈夫。出来るときもあるんだから。きっともうすぐコツがつかめる。そうしたら、何度やっても一人で出来るようになるから」
俺は早く家に帰りたかった。
帰っておやつを食べて、テレビを見て、夕食ができるのをゆっくり待っていたかった。
でも、母ちゃんがあんまり真剣な顔をするから、俺はもう一度鉄棒を握った。
何度も失敗した。そのたびに母ちゃんが、
「もう少しだよ!お尻が上がってきたから!」
って励ましてくれる。
それから何回めかの挑戦で、俺の体はびっくりするくらい簡単に鉄棒に上がった。
「あっ!できた!」
「すごいじゃん!もう一回やってみな!」
言われてやってみると、またできるんだ。
「やったやった!ジロ!出来るようになったじゃん!」
三回目も成功。
母ちゃんは、俺をぎゅうぎゅう抱き締めて、頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。
俺も嬉しくて嬉しくて、母ちゃんのほっぺたを両手でパンパン叩くように挟んで笑った。
帰り道は俺たちご機嫌で、二人で手をつないで、そう遠くない道のりを、俺の通ってた小学校の校歌を歌いながら歩いた。
すごく懐かしい気持ちになったのは、俺が幼稚園の時みたいに、どこにいくにも母ちゃんと一緒じゃなくなって、友達と遊ぶことが多くなったからなんだと、その時は思ったな。