難攻不落な彼に口説かれたら
1、最悪な再会
「きゃあ!」

会社のエレベーターに乗ろうとしたら、一気に人がなだれ込んできて私はバランスを崩した。

奥にいた男性の胸にドンとぶつかり、小声で謝る。

「あっ、すみません」

時刻は、午前八時五十五分を過ぎている。

うちの会社の始業時間は九時。

始業間際だから、エレベーターは激混みだ。

外は十二月の中旬だけあって寒かったけど、今は人が密集しているせいか暑くてムシムシする。

私は中村雪乃。二十七歳、独身。

身長百五十八センチ、髪は茶髪で腰まである。

目は二重で瞳はヘーゼルナッツ色。でも、生粋の日本人で、大手電気機器メーカー『フォーチュン』の経営企画室で働いているごく普通のOLだ。

『フォーチュン』は日本の五大家電メーカーのひとつで、国内外に二十を超える支店や関連事業所があり、丸の内にあるこの三十五階建ての本社ビルには約八百人もの社員が従事している。
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