難攻不落な彼に口説かれたら
頭の中はぐちゃぐちゃ。

彼と目を合わせないように正面を見据えるが、ひどく動揺していて視線が彷徨う。

おまけに堤防が崩壊したかのように涙が溢れてきて……。

「ぜ、全部なかったこと……にして下さい。昨夜のことは……忘れて」

震える声でとりあえずそれだけ言うが、何故か不機嫌な声が耳に届いた。

「嫌だね」

え?

まさか異議を唱えられるとは思ってなくて、ますます混乱した。

お互い忘れた方が、片岡君だって安心するはず。

なのにどうして反対するの?

よくわからないよ!

「なしになんて絶対にしない」

必死で感情を抑えているような声だった。
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