難攻不落な彼に口説かれたら
「痛ひゃい」

「ひとりで何やってんの?馬鹿だな」

キッチンから戻って来た片岡君は、私を見て苦笑する。

慌てて何もなかった振りをする私に、彼はマグカップを手渡した。

「ほら、これ飲んで」

中身はホットミルク。

微かに漂うブランデーの香りがする。

……いい匂い。

「頂きます」

片岡君の目を見てそう言うと、マグカップをゆっくり口に運んだ。

「……美味しい」

心地よい甘さに思わず笑顔になる。

「やっと笑った」

片岡君は、私の頰にそっと手を添えた。

「お代はこれでいいよ」

その目が優しく微笑んだかと思ったら、自分の唇に彼の唇が重なった。
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