難攻不落な彼に口説かれたら
古賀さんは立ち上がると、俺の肩にポンと手を置いた。

『わかりました。お嬢さん、お大事に』

他のみんなにも別れの挨拶をして、古賀さんは店を後にした。

眠っている雪乃の頭をそっと撫でながら考える。

古賀さんの言葉で自覚した。

俺は……彼女が好きなんだ。

誰にも渡したくないし、触れさせたくもない。

それから二十分ほど経っただろうか?

会はお開きになり、雪乃を起こす。

『中村さん、起きて。帰るよ』

『……ひゃい』

ムクッと俺の膝から起き上がり、フラフラしながら歩く雪乃。

起きたのはいいが、この様子だとひとりで家に帰れるか怪しい。

危なっかしくてすかさず手を貸して彼女を支えると、彼女のコートとバッグを掴んで店を出る。
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