難攻不落な彼に口説かれたら
『女子寮だからねえ、片岡君は入れないよ』

この酔っ払い。

『いいから、教えて』

『教えません』

雪乃はフンと子供のようにソッポを向く。

『じゃあ、古賀さんに聞く』

スーツのポケットからスマホを取り出すと、雪乃は『駄目!』と言って俺の手から素早くスマホを奪った。

『この駄々っ子。じゃあ、どこに行きたいの?』

溜め息交じりの声で聞けば、雪乃は急に寂しそうな顔で言った。

『……片岡君と一緒にいたかっただけ。ごめん。私……ひとりで帰る』

俺にスマホを返すと、雪乃はタクシーのドアに手をかける。

そんな可愛いこと言われて、帰せるわけがない。

寿司屋で『大好き』って言われた時は、彼女が酔っていたから本気にはしていなかった。
< 119 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop