難攻不落な彼に口説かれたら
だが、今の雪乃の発言は、素面で言ったような気がする。

雪乃の手を掴んで止めると、タクシーの運転手に行き先を告げた。

『麻布までお願いします』

運転手が静かに車を発進させると、雪乃は驚いた様子で俺を見る。

『俺と一緒にいたいんでしょう?』

スマホをポケットにしまいながら、雪乃に優しく微笑む。

すると、彼女は指をいじりながら恥ずかしげに答えた。

『……うん』

雪乃の手を掴むと自分の指を絡め、彼女に確認する。

『酔いは醒めた?』

『……だいぶ』

その答えを聞いて、タクシーに乗ったあたりから、酔いは醒めていたんだと思った。
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