難攻不落な彼に口説かれたら
エレベーターに乗って部屋に着くと、まだ足元の覚束ない雪乃のコートと靴を玄関で脱がせ、彼女を抱き上げた。

緊張しているのか雪乃は無言で俺の胸に頬を寄せる。

自分の寝室に彼女を連れて行くと、『好きだ』って囁いて愛し合った。

ベッドの中で何度も『好き』と俺に言った雪乃。

彼女の口からその言葉を聞く度、愛おしさが増す。

自分から欲しいと思ったのは初めてだった。

経験はそれなりにあったけど、感情は伴わない。

だが、雪乃の場合は違った。

オスとしての欲望がなかったと言えば嘘になるが、彼女に経験がないのがわかると、肌が触れ合って抱き合っているだけで満足だった。

好きだと彼女の寝顔も、肌の温もりも、彼女のキスも……全てが愛おしくて……。

こんな感情、今までなかった。

お互い同じ想いで抱き合ったはずなのに、今朝起きると雪乃がひどく狼狽えていて……。
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