難攻不落な彼に口説かれたら
『……全部なかったこと……にして下さい。昨夜のことは……忘れて』

雪乃にそう言われた時は、一瞬目の前が真っ暗になった。

『嫌だね』

忘れるなんて出来ない。

『なしになんて絶対にしない』

なるだけ声を荒げないようにして、雪乃にはっきりと伝える。

それでも、彼女に対して怒りの感情が溢れ出す。

『昨日俺に『好き』って何度も言ったのは誰?全部嘘だった?』

『嘘じゃない!』

雪乃が必死な顔で否定するのを見て、少し冷静さを取り戻した。

だが、彼女はなぜか自分の気持ちが俺の迷惑になるって勝手な解釈をする。

『迷惑だなんて思ってない。俺も『好きだ』って言ったの忘れた?』

雪乃の思い込みを正すと、彼女はキョトンとした顔で俺を見た。
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