難攻不落な彼に口説かれたら
仁が指差したのは、手作りでサイズが四十センチほどのテディベア。

手を伸ばしてそのぬいぐるみに触れてみる。

「顔も可愛いし、手触りもいいね」

仁に向って微笑むと、彼も微笑み返した。

そのテディベアを購入し、違うフロアでアクセサリーも買うと仁と一緒にデパートを出る。

「持つよ」

仁が私の手からテディベアの入った紙袋を奪う。

「あっ、そんな重くないよ」

「雪乃が持ってると転びそうで心配。反論があるならどうぞ」

仁がクスッと笑いながら言うが、悔しいことに何も言えなかった。

彼の前ではそそっかしい姿しか見せていない。

髪がボタンに絡まったり、駅でコケたり……。

「……ありがと」

礼を言うと、仁が今度は手を握ってきた。

ビックリして彼を見上げると、「どうしたの?」って逆に聞かれて戸惑った。
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