難攻不落な彼に口説かれたら
「……手を握るのも私が心配だから?」

「それもあるけど、俺が雪乃に触れたいから」

フッと微笑すると、仁は身を屈めて私にチュッと軽くキスをする。

それは、ほんの一瞬だった。

だが、公衆の面前でのキスにドギマギしてしまう。

周囲が気になってキョロキョロしてしまう私は小心者。

「雪乃、顔真っ赤だよ」

仁が私の頰に手を添え、面白そうに言う。

キスした本人が平然としているのが憎らしい。

「だ、誰のせいでこうなってると……」

上目遣いに仁を睨んで文句を言うが、彼はなぜか私のせいにする。

「それは、雪乃が可愛いのがいけない」

「それ……意味わかんないよ」

可愛いなんて今まで面と向かって言う異性なんていなかった。

仕草が可愛いとかならあったけど、それは顔が可愛いのとは別。
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