難攻不落な彼に口説かれたら
顔が残念な人に言う褒め言葉だ。

「雪乃は、自分のことには鈍感だからね」

どこか諦めた口調で言う仁。

「ひょっとして、仁って視力悪い?」

「両目とも1.5あるよ。目が悪いのは雪乃の方じゃないの?」

「私だって1.0はあるよ」

「ちゃんと俺が見えてるんだね。安心したよ」

……何だろう。

馬鹿にされてるような気がするんですけど。

少しムッとすると、急に仁が私の手を引いて歩き出した。

「ちょっと俺にも付き合って」

そう言って突然仁に連れて行かれたのは有名ブランド店。

イブだけあって店内はカップルだらけだ。

「従妹にプレゼント買いたいんだ」

仁は私の手に指を絡めギュッと握ってくる。

うわっ、恋人繋ぎ。

そんな些細なことに女子高生みたいにドキドキしながらも、平静を装った。
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