難攻不落な彼に口説かれたら
「実際つけてるの見ないとイメージ湧かないから」

「ああ、なるほど」

仁に言葉に妙に納得する私。

「うん。いい感じ。大人な女性に見えるよ」

仁は満足げに眺めて、私をからかう。

「……すでに大人なんですけど」

目を細めて抗議するが、仁はそんな私を相手にせず「次」と言って、また違うネックレスを私に試す。

それを何度繰り返しただろう。

私が最初につけてもらった花柄のネックレスをじっと見ていたら、仁がそれを指差して「これ、お願いします」と店員さんに頼んだ。

「花柄のにしたんだ。きっと従妹の子喜ぶよ」

ニコッと笑顔を作って仁に声をかけると、彼は「ありがと」と言って微笑み返す。

値札がなかったけど、結構高価なものなんだろうな。

仁が支払いを済ませ、ネックレスの入った紙袋を受け取ると、私達は店を後にした。

時刻は午後六時過ぎ。
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