難攻不落な彼に口説かれたら
「も……もう、仁!」

やっと声を出せるようになって仁に説教しようとしたら、エレベーターの扉が開いて人がどっと入ってきた。

よろける私の腕をすかさず仁が掴んで支え、手をギュッと握ってきた。

他の人にバレたらどうするの!

ビックリして顔を上げて彼を見れば、素知らぬ顔で正面を見ている。

……私の心臓もたないかも。

朝からそんな調子でオフィスに向かう。

幸い部屋には誰もいなかった。

「あんなとこで手を繋いだら、みんなにバレちゃうよ」

仁に向かって文句を言うが、彼はしれっとした顔で言った。

「俺はむしろバレた方がいいけど。社内恋愛が禁止とは聞いてないよ」

バレた方がいいって……。
< 144 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop