難攻不落な彼に口説かれたら
「嫌よ!パパに会うまでは帰らない」

「もう、心ちゃん、そんなわがまま言わないの」

雪乃は困惑顔で、心ちゃんの両肩に手を置く。

「ここは会社だし、仕事があるから心ちゃんとは遊べないのよ」

雪乃が諭すように言うが、心ちゃんは「帰る」とは言わなかった。

「だったら、心も仕事してパパ待ってる」

「心ちゃん〜!」

頭を抱える雪乃の肩にポンと叩いて、穏やかな声で言った。

「仕事手伝わせてあげたら?無理矢理帰しても、逃亡すると思うよ」

心ちゃんの頑固さは、雪乃に似ている。

なんとしてでもパパに会おうとするだろう。

「わ〜、お兄ちゃん、大好き!」

心ちゃんが急に笑顔になって俺にギュッと抱きつく。

「仁って小さい子には優しいんだ」

雪乃は俺と心ちゃんを見て、少し拗ねた口調で言う。
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