難攻不落な彼に口説かれたら
やっぱり押されたのだろうか?

でも、ぶつかってしまっただけかも……。

聞こえた声も……きっと私の気のせい。

そう思いたい。

「雨だから滑りやすくて、足を滑らせたのかも……」

「歩ける?」

美鈴さんの手を借りながら、階段を下りると左足首がズキンと痛んだ。

一段ずつゆっくり下りるが、足が痛くて冷や汗が出てくる。

「雪乃ちゃん、顔色悪いわよ。病院行こう」

駅を出ると、無理矢理美鈴さんにタクシーに乗せられ、病院に連れていかれた。

レントゲンを撮られたけど、骨には異常はなく、ただの捻挫だった。

額は打ち身で出血はなく、少し青あざになっている程度。

怪我よりも精神的なダメージの方が大きい。

人が…… 怖い。
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