難攻不落な彼に口説かれたら
その時、彼女の額が紫色になっていることに気づいた。

「この額のあざも転んだ時に出来たの?」

雪乃の額に触れると、痛かったのか彼女は微かに顔をしかめた。

「……うん。傘持ってたから手を地面につくのが遅くなって……」

何だろう。

言葉の歯切れが悪いっていうか……。

本当に転んで怪我しただけなのだろうか?

目の下の隈も昨日より酷いし、元気がない。

「本当に転んだの?何か隠してない?」

じっと雪乃の目を見て確認するが、彼女は俺から目を逸らして俯く。

「……あのう、片岡さん」

すっかり存在を忘れていたが、田中さんが遠慮がちに俺に声をかけた。

「私も直接見たわけじゃないから断言はできないですけど、雪乃ちゃん……女の人に押されて階段から落ちたのかもしれないです」
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