難攻不落な彼に口説かれたら
うっ、同じ『いいよ』でも断ってきた〜。

でも、ここで折れるわけにはいかない。

「みんなとの親睦を深めるためです。互いを知るいい機会ですよ」

もっともらしい理由を述べるが、片岡君は賛同しなかった。

「親睦ねえ。あそこにいるのが木村さん、斜め前の席にいるのが野田さん、その横が田中さん……、君の隣の席にいるのが小野寺、そして、君が……」

片岡君はうちのメンバー全員の名前を口にすると、私の顔を見て言葉を切った。

フッとどこか意地悪な笑みを浮かべ、私の下げている名札を見ながら言う。

「中村雪乃さん」

その様子を見て、ガッカリする自分がいた。

本当は……私だって気づいて欲しかった。

しかも、他のメンバーの名前は覚えているのに、私だけ覚えていないなんて……。
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