難攻不落な彼に口説かれたら
「病気じゃないし、家にひとりでいると怖くて……。会社にいる方がいい」

雪乃が俺のスーツの袖をギュッと掴む。

きっと、昨日は怖くて眠れなかったんだろう。

夜ラインした時、あっさりした返事だとは思ったんだ。

これから寝るって返事がきたからすぐにラインを終わらせたけど、自分の直感に従って雪乃の元に駆けつければよかった。

「雪乃ちゃんのことお願いしてもいいですか?私も心配で……。本当は古賀さんに頼もうかと思ったんですけど、雪乃ちゃんの王子様は片岡さんみたいだから」

田中さんは、俺を見上げて微かに頰をゆるめた。

雪乃と恋人というのはバレてしまったが、隠すつもりはない。

「ああ。古賀さんには俺から伝えておくし、他に何か気になったことがあれば教えて欲しい」

田中さんの目を見て答えると、「はい」とホッとしたように笑った。
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