難攻不落な彼に口説かれたら
清掃員の制服を着た青年が暇そうにタバコを吸ってて、俺はそいつに軽く蹴りを入れた。

「何堂々とサボってるんだよ」

その青年……拓海は俺に噛み付いた。

あの事件のこともあり、こいつは社長命令で清掃員の仕事をさせられている。

トイレ掃除なんて拓海にとっては屈辱だろう。

「いだっ!突然やって来て何だよ。こんなダリー仕事出来るわけないだろ?」

「少しは反省しろよ。真面目にやらないと、叔父さんに言ってお前の銀行口座凍結させるぞ」

俺の脅しが効いたのか、拓海は急に大人しくなる。

「……お前、俺を監視に来たのかよ」

「いや、お前に聞きたいことがあって」

「俺は何も話すことはないね」

俺に反抗するようにそう言うと、拓海は紫煙をくゆらせた。

「雪乃が昨日駅で女に押されて階段から落ちた。女は『いなくなればいいのよ』って雪乃に言っていたらしい。お前の仕業か?」
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