難攻不落な彼に口説かれたら
よし、食いついた。

「では、お手並み拝見」

俺は雪乃に向かって微笑んだ。

「うわ、自信満々だね。こないだ作ってくれたオムレツも美味しかったし、仁はどこでも主夫出来るんじゃない?」

褒めてくれるのはいいが、『どこでも』と言うのが気に入らない。

「それはどうも。だったら、毎日キスしてくれたらいつでも雪乃専属の主夫になるよ」

茶化すように言いながらも、雪乃の反応を窺う。

「調子いいんだから」

雪乃はトンと俺の背中を叩いて、少し困ったように笑った。

「俺は本気だけどね」

クスッと笑うと、強力粉をキッチンの棚から取り出して、こね始める。

「嘘!皮から作ってる?うちは皮はいつも市販の使ってるのに……。仁、凄過ぎだよ」

雪乃は麺棒で俺が強力粉をこねているのを見て、尊敬の眼差しで俺を見た。
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