難攻不落な彼に口説かれたら
手を伸ばして彼女の頰に触れる。

額のあざは紫から黒に変わっている。

打ち所が悪かったらどうなっていただろう。

考えるだけでも怖い。

彼女を守らなければって思った。

母親が亡くなってからは、守るべきものを失って、ただ自分のキャリアのためにひたすら突っ走って来た気がする。

もう二度と失いたくない。

雪乃に顔を近づけると、そっと口付けた。

「う……ん」

少し艶っぽい声を上げる雪乃。

起きるかと思ったが、雪乃は寝返りを打ってそのまま眠り続ける。

疲れてるだろうし、まだ寝かせておこう。

サイドテーブルに置いたスマホに手を伸ばすと、昨日調査を依頼した興信所からメールが来ていた。

拓海が言ってたキャバ嬢は、昨日はキャバクラに出勤していなかったらしい。
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