難攻不落な彼に口説かれたら
拓海は冷ややな目で女を罵倒した。

「拓海は、この女に騙されてるのよ!」

女は暴れるようにして拓海の手を振り払う。

「お前なあ。数回寝たくらいで俺の彼女面すんな。迷惑なんだよ!」

拓海のセリフに激昂した女が彼に襲いかかる。

「うわっ!」

目を見開き腕で避けようとする拓海。

俺は素早く動いて女のナイフを蹴り上げた。

ナイフが宙を飛び、女はよろけてバランスを崩した。

コトンっと音がして、ナイフが地面に転がる。

「拓海、ナイフ」

目をパチクリさせる拓海にそう促すと、俺は女に声をかけた。

「こんなことしたって拓海は手に入らないよ」

「だって、……貯金全部彼のために使ったの。それなのに……私には素っ気なくて。なんとしてでも彼が欲しかったのよ」
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