難攻不落な彼に口説かれたら
女は地面に手をついて泣き叫ぶ。

「拓海も悪いけど、君のやってることは間違ってる」

諭すようにそう言うと、女も自分の過ちに気づいたのか泣き崩れた。

「拓海、彼女のお金、自分でちゃんと働いて返せよ」
背後にいる拓海を振り返ると、厳しい口調で言った。
「……わかってる」

ギュッと唇を噛み締めながら拓海は返事をする。

俺に従うには悔しいが、自分が刺されそうになってさすがに少しは改心する気になったのかもしれない。

騒ぎを聞きつけたのか、警備員が息急き切ってやってきた。

スマホを取り出すと、社長に事件のことを報告し、今回のことは警察沙汰にしないことで話がついた。

変にマスコミに騒がれては困る。

警備員が女を連れていくと、拓海が雪乃に向き直った。
< 216 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop