難攻不落な彼に口説かれたら
仁はまだ気にしているのか、どこか心配そうな眼差しで聞いてくる。

「お正月は仁と過ごすって言ったら、秀兄にいつもの調子でからかわれちゃってね。北陸って行ったことないから楽しみ。ひょっとしてその旅行のためにタイヤ買ったの?」

タイヤって高そうだし、正月旅行のためだけだとしたら申し訳ない。

私の心配に仁は笑って否定する。

「いや。スキーシーズンに入るから買っておいて損はないかと思って。雪乃はスキーするの?」

「ボーゲンしか出来ないけどね」

「基礎が出来てればいいよ。足が治ったら滑りに行こう。じゃあ、俺も役員室周りしてくるよ。まだ新参者だしね」

悪戯っぽく笑うと、仁は私の頭をクシュっと撫でてこの場を後にした。

その後、冷蔵庫のチェックや水回りの掃除を済ませると、自分も総務や秘書室に挨拶回りに出る。

総務にいる同期と話した後は、秘書室に向かった。
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